踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!(ネタバレあり)
年末にやっていたものをようやく見ることができたのだが、こんなに時間が経ってしまったのにもかかわらずレビューを書こうと思ったのは、内容があまりにも酷かったからである。
私が作品を観る上で一番重視しているのは、ストーリーは当然のことなので置いておくとして、「いかに良いテンポで物語が進んでいくか」という点に尽きる。
導入部分で物語の方向性を提示し、どういう展開になるのか予想できないような引きを作ってから状況を整理する時間を設け、結末に向けてパズルのピースを小出しにしていきながら急展開を迎えた後一気に収束する。
この過程に笑えるポイントを含めれば、見ていて飽きるということはまずないのではないだろうか。
とはいえ、言うのと作るのとではまた別の話であり、全く飽きの来ない作品というのはそうそう作れないというのもわかっている。
大抵の作品は物語の途中どこかかならず飽きてしまうポイントがあり、それを他でカバーするという感じなのだが、この作品に関しては逆で飽きないで見ていられるポイントが何箇所かにあるだけで他でカバーが一切できていない、という感じだった。
まず、最初の導入部分の主人公である青島が何やら捜査会議を仕切っているというシーン。
「え?あの青島が遂に人に使われる側から使う側になったの?!」と思わせる演出は、前作から青島の立場がどうなったのか?と気になるように仕向けられておりそこまで悪くなかったとは思う。
が、長い。
私はこれを「夢オチかな?」と思ってみていたのだが、実際は引越しの責任者でした!ちゃんちゃん♪とすぐに種が割れ・・・てから延々引越しのシーン。
確かにこの引越しに事件が関連してくるので、少しくらいは引越しのシーンを流してもいいとは思うのだが、それにしても犯人が絡んでくるまでがまー長い。
これでは公開時劇場に寝ないで来ていた人とかが居たら、あまりのスローテンポに寝てしまっていたのではないかと疑ってしまうほどだった。
とはいえ、こうして延々と引越しのシーンという平和な描写がなされたのならば、その反動としてさぞ大きな事件が起きるんだろうと期待しながら見ていたら・・・なんと起きたのは「署内の拳銃が3丁盗まれる」という微妙な事件。
現実であればどんな事件だろうと事件は事件!で通るが、これはあくまでも娯楽目的で作られたフィクション。
例えベタだろうがなんだろうが見ている人が引いてしまうくらい凶悪な事件を起こしてこそ、それを解決していく青島達への応援にも熱が入るというものではないだろうか。
しかし諦めの悪いことに定評のある私、めげずにこの盗難事件はただの前菜に過ぎず、この拳銃を使ってさぞ難解なメインとなる事件が発生するのだろう、と楽観視していたらそのまま特に盛り上がることなく終わった。
というのは言いすぎだとしても、箇条書きできるほどにあっさりした内容だったことは否めない。
2時間強もあったにもかかわらず全く波風が立たなかったような印象を受けたのは何故なのか、上記で述べた理由以外で私は以下の点が原因だったのではないかと思っている。
■散らかった見所
踊る、といえばやはり「現場とキャリア組との軋轢」が頭に浮かぶ。
しかし、本作ではこれに加えて「小栗旬演じる中立(?)のキャリア」と「青島の病気」という2つが混ざってしまったため、何だか散らかってしまっていた。
これによって「キャリアに噛み付く下っ端」「理論ばかりで人の気持ちが分からないキャリアと対峙」「正義のために(病気を放置し)死ぬのか」という3つの見所が浮かび上がり物語が分かり難くなったような気がする。
そのせいで山場も分かり難くなってしまい、恐らく「ここがピーク!」という一番大事な場面が至極あっさりしてしまっていた。
もしやりたいなら自分が正しいと信じて止まない小栗旬に真っ向から対峙する青島か、一度は心が折れかけるも最後は最後の時まで刑事であり続ける青島(結局腫瘍は陽性)のどちらかに絞るべきだったのではないだろうか。
■魅力的な登場人物の欠如
踊る、といえば個性豊かな登場人物もまた魅力の一つだと思うのだが、レギュラーだった水野美紀演じる柏木雪乃は一切出演なし。
なにやら噂では事務所関係の揉め事が原因とのことらしいのだが、それが真実にせよそうでないにせよ、彼女をキャストから外したのはかなりの失敗だったと思う。
また、シリーズでかなり良い味を出していた和久さんだが、演じていたいかりや長介が亡くなってしまったため踊るにとって大きな痛手だったはずである。
しかし、それを「和久の甥を出す」ことで軌道修正したのは、もちろん和久さんの穴は埋められないにせよ中々に上手かったと思う。
思うのだが、肝心の甥のキャラクターが全く魅力的ではなかったのが残念だった。
和久さんの言葉をことある毎に大声で叫ぶ、というのは余にも和久さんに引っ張られすぎていやしないか。
むしろ和久さんのような「足を使うアナログな捜査」を忌み嫌い、全く別のアプローチで捜査しようとする嫌な奴というキャラクターにして、青島と絡ませることで徐々に伯父を見直すようになる、とした方がベタ故よっぽど分かりやすかった。
■増えすぎたキャスト
魅力的な登場人物が減る一方で、魅力的とまでは言えないようなキャラクターが本作では大勢登場しており、ここでもまたごちゃごちゃとした印象をうけた。
全くやる気のないPCをいじってばかりの栗山、中国から研修にやってきている王、果たしてこの2人を新しく入れる必要はあったのだろうか。
それなら踊るファンが見たいと思っているであろう、青島とすみれの絡みや、青島と室井との絡みを増やすべきだったように思える。
この他にも色々とあるが、あまりにも長々と書いてしまったためここら辺で終わりにすることにする。
なんだかダラダラと書いてしまったせいでまとまりのない文章となり分かり難くなってしまったので最後にまとめると、
事件もしょぼいなら青島の無茶もしょぼい
というのが一番この作品をダメにしてしまった要因だったのではないだろうか。
色々と要因を挙げたが、やはりこれが最も良くなかったように思える。
予告によるとどうやらFINALを製作するとのことなので、どうか「終わりよければすべて良し」となるような作品となることを願っている。