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デジモンアドベンチャー tri. 第1章「再会」(ネタバレあり)

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公開前に出たキャラデザやら、声優陣の変更やらで微妙に雲行きが怪しくなっていたが、それでもやはり気になるものは気になる。

ということで、公開期間である3週間が過ぎる前に、滑りこむようにして観に行ってきた。



無印に関しては、私は当時リアルタイムで観ていた気がするのだが、幼かったためあまり記憶に残っておらず、数年前にまた再度観ている。

とはいえ記憶力が残念なタイプであるからして、もはや細部までは覚えていないという、そんな状況での鑑賞だった。

まず、内容に入る前にキャラデザについてだが、思っていたよりは悪くない。

太一達が成長すると、大体こんな感じになっていてもおかしくないな、と思えたし、全くの別物というわけでもなかったのが良かったのだと思う。

次に、一番騒ぎになっていた声については、私が元々賛成派という事もあるのかもしれないが、むしろ声優陣を変更して良かったのではないかと思えるほど違和感がなかった。

成長して、声変わりをすればこんな感じになるだろうなと、素直に思わせてくれるような、キャラクターに合った声質だったし、演技もそれぞれ上手くできていたように思える。

なにより、デジモンたちの声は変えていないという演出がまた良いではないか。

という事で、鑑賞前に不安視していた部分についてはなんら問題がなかったといえる。



では、肝心の内容はどうか。

結論から言うと、正直なところ微妙だったと言わざるを得ない。

冒頭、成長した太一とヒカリの日常から始まり、「選ばれし子どもたち」があれからどうなったのかをまず描く。これは導入として当然の形であり、文句は一切ない。

そこから、本来現れるはずのないクワガーモンが突如現実世界の方に出現し、太一が偶然にも現場に居合わせることで、どうにかしようとするというのも、「主人公スキル:トラブルホイホイ」が発動していてとても良い。

そこから生身の人間と、言ってしまえばモンスターとの戦いなわけだから、当然敵うわけもなく、太一がピンチに陥る。ここまでは本当にいい流れである。

そして太一危ない!というところでアグモンが登場、そこから流れる「brave heart」。最高としか言えない。

もうパブロフの犬状態と化しており、この曲が流れるだけで涙腺が緩んでしまうわけで、良くOPと挿入歌をそのままにしておいてくれたと拍手を送りたくなった。



ということで、ここまでは割といい流れだったのだが、このあと、羽田空港へと移動して一部を除いて他の子どもたちとパートナーデジモンが合流し、クワガーモンご一行を倒した後、ここからがちょっと物足りなかったのだ。

この劇場版のタイトルは何か。そう、「再会」である。

我々からすれば、本当に、それはもう本当に久しぶりにアグモンたちと再会するわけだが、太一たちの感覚ではどうやら3年ほどの間会えなくなっていたらしい。

我々と比べると期間は短いものの、それでも3年という月日は長い。しかも、太一たちは会えなくなった原因が不明だったわけで、もしかしたらこのまま会えないのかもしれないという漠然とした不安があったはずである。

事実、太一は先生に進路のことで呼び出された時に、今一番したいことはと問われて「友達(アグモン)に会いたい」と述べている。

そうであるならば、アグモンが再び自分の前に現れたというのは、太一にとって相当に喜ばしかったに違いない。

にもかかわらず、再会できた喜びがそこまで伝わってこないというか、やけにあっさりしていたのだ。

個人的には、会えなかった期間、アグモンたちはどう過ごしていたのか、太一自身やその周りにどういう変化があったのかなどを、お互いに語り合ったりするなど、再び会えたことをもっと喜び合うシーンが欲しかった。



とはいえ、少々物足りなさはあるものの、それだけで微妙とまではいかない。

では一体何が問題だったのかというと、太一の心の動きと最後の盛り上がりのシーン。これによって一気に「???」となってしまったのだ。

アグモンたちの活躍によって、何とかクワガーモンを撃退した太一たち。普通であればやってやったぞ!とか、これからまた攻めてきたときどうするかとか、そういったことを心配するはずである。

だが、どうにも太一の様子がおかしい。

周りもそのことに気付いており、ヤマトが詰め寄るもはっきりしない。

このあたりで、なるほど、ここが第1章の山場というか、盛り上がりに向けての前フリなのかと思って観ていたのだが、そこから太一がはっきりしない理由までが少しくどい。

くどいが悪いとまではいかず、様子がおかしかった理由についても「ああ、なるほど」と納得できるものだったのでここまでは問題なかったのだ。

しかし、ここから一気に微妙になる。

太一の様子がおかしかったのは、自分が周囲に与える影響の大きさを目の当たりにしてしまったかららしい。

当時はいい意味でも悪い意味でも子供だったため、自分(とアグモン)が持つ力への責任については深く考えず、正しいと思うことをがむしゃらにやりきれた。

そんな子供時代から6年も経過すれば、色々と経験してきているわけで、嫌でも周りが見えてしまう。

自分とアグモンが無責任に力を振るう事への疑問と恐れ、このことが太一の様子をおかしくしていたわけだが、相手(敵側のデジモン)は待ってはくれない。

クワガーモンよりも数倍強そうな「アルファモン」の出現で、街はもちろんのこと、自分の仲間までもがピンチに陥ってしまう。

側にいたヤマトも例外ではなく、このまま太一が何もしなければ全滅か?!というところまで追いつめられる。

だが、この段階に来てもまだ太一は迷っている。そんな迷っている太一をボロボロになったヤマトが叱責すると、太一の様子が少し変わったのだ。



???



これまでも散々ヤマトには叱責されており、それでも太一の態度は変わらなかったはずである。

ならばそれ以上の何か、太一の考えが変わる外部的事情等(例えば、大切なアグモンを永遠に失いそうになるとか、子どもたちの誰かが再起不能に近くなるとか)が起きない限りは、太一の煮え切らない態度に変化は見られないはずである。

しかし実際はヤマトの「何もしないなら逃げてるのと変わらない」という、ちょっと前に太一に言ったことをまた繰り返しただけの罵倒ともとれる叱責のみ。

これで太一の心情に変化が生じるというのは若干の違和感を覚えてしまう。



だが、「一番の親友に言われて目が覚めた」ととれなくもないので、まあいいとしよう。

しかしその次の演出、これだけはどうしても「どうして!」と思わずにはいられなかった。

ヤマトの言葉で太一もどこか吹っ切れた様子となり、いよいよ反げ・・・えっ?もう進化したワーガルルモンとメタルグレイモンがアルファモンを攻げ・・・え?!ワープ進化して攻撃してる?!!

そう、一番の見せ場、いや、魅せ場であろう完全体への進化からのワープ進化がダイジェストで一瞬にしてお送りされたのだ。

そこはどう考えても「まずは完全体へ進化→しかし敵わない」、「そこでワープ進化→それでもダメ」、「ならば満を持してのオメガモン!」という流れしかないのではないか。ファンならだれもがじっくりと進化の過程を観たかったはずである。

しかし実際はあっけなく完全体(アグモンに至っては成熟期をすっ飛ばしている)→究極体→オメガモンでアルファモン撃退(?)。

そして残されたのは戦いの強烈な爪痕のみ、しかも何と、実は太一、まだ吹っ切れたわけではなかったらしいのだ。

悩みを抱えた状態で完全体、究極体への進化は流石に違和感がかなり大きかったし、だったらあの太一の下りは何だったのかと思わずにはいられなかった。



ということで、序盤、中盤は中々に良く、懐かしさも手伝って素直にのめり込むことができたのだが、終盤で一気にこけてしまった。そんな感想を抱いた。

とはいえ、まだ第1章。全部で6章ということなので、まだtri.自体がどうこうとは言わないし、言えない。

この序盤の違和感を吹き飛ばしてくれるような物語となることを願って、第2章の公開を楽しみに待つことにする。