Lawless Area

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家政婦のミタ(ネタバレあり)


今クールのドラマが始まる際、このタイトルを聞いた瞬間完全にネタというか、あの「まぁっ!」でお馴染みの家政婦さんサスペンスを茶化したドラマだと思ったため見る気ゼロだった。

そのまましばらくはその存在すら忘れていたのだが、各ドラマが中盤あたりに差し掛かる頃になって、ネットやテレビで何やら「面白い!」と騒いでいるではないか。

正直日テレの「ミタ押し」が露骨過ぎてそれでも見る気が中々起きなかったのだが、こういう時意地を張っていてもろくな事がないのはもう経験則で明らかだったため、妹の勧めもあって試しに1話見てみることにした。



で、1話見てみたところ、なんと本当に面白いではないか。ビックリした。

面白いという評判を事前に聞いていた場合、ハードルが無駄に高くなっていることから「何だ、言ってもそこまででもないじゃないか」となることが往々にしてあるのだが、この作品はそれを乗り越えてなお面白かったのだ。



まず「昼ドラでやれ」と思うような家族のドロドロというどん底状態から物語が始まり、そこから一度バラバラになった家族がまた結束していくという描写。

命令されれば何でもこなしてしまうという謎めいたミタと関わることで、徐々に家族の一人一人が成長していく様子がとても綺麗に描かれていたと思う。



そして、何よりメインであるミタのミステリアス具合が半端じゃない。

何故言われた事は何でもやってしまうのか、何故一切笑わないのか、過去に何があったのか等々、気になるところがたくさんあり、物語が進むに連れてその謎が徐々に明らかになっていくという見せ方もとても上手かった。

この点、ミタ役の松嶋菜々子の演技力もそれに一役買っていたように思える。

無表情の中にも少しずつ感情が見え隠れするあの感じは、誰にでもできる演技ではないのではないだろうか。



また、所々に挟まれるシュールな笑いも素晴らしかった。

ミタのあの不気味というか、奇妙な様子と、それを受けた普通の人間である阿須田家の人々のリアクションがとてもいい味を出していたと思う。



というわけで、この家政婦のミタという作品は、シリアス、ハートフル、コメディという3つの要素が、6:3:1くらいの割合で上手く組み込まれており、そういうところがあの高視聴率に繋がったのではないだろうか。



が、しかし、今まで面白かったからこそなのだろうか、変に期待しすぎたせいで最終回は正直そこまででもなかったような気がする。

大抵のドラマや漫画の最終回は微妙になる傾向にあるため、「まあ、こんなものかなぁ」という感じがしなくもないのだが、とにかく私が想像していた最終回とは少し異なっていたのだ。



やはり最終回というと、「ミタは幸せになれるのか」、「笑顔を見ることができるのか」という2点が最大の見所だと思う。

そして、これまでの流れからして「阿須田家の人々が不幸になり、ミタは再び笑顔を見せる事はなかった・・・」なんていうバッドエンドになるわけもなく、この両方を満たすことは誰もが容易に予想できたことだろう。

となると、この2点、特に後者の「笑顔」をいつ、どういう形で見せるかということが問題となってくるわけだが、このいつ、どういう形でというのが個人的には微妙だった。



確かに阿須田家の人々がミタの笑顔を別れる前に見て、良かったねーとなるのもまあいいとは思うのだが、それにしてはその笑顔を見せるタイミングが早すぎやしなかっただろうか。

しかも、これまで散々頑なに拒んできたにもかかわらず、最終的には「業務命令」で笑顔、そしてそこからずっと笑顔のターンというのはどうにも違和感が付きまとった。

更に言うと、ミタがずっと笑顔でいる間、家族がミタに対して一言ずつコメントするのだが、その家族はみんな泣いているので



ミタ→笑顔 しかし 家族→号泣



というなんともシュールな絵になってしまいどうにも素直に感動できなかった。というかちょっと笑った。

個人的にはやはりベタではあるが、業務命令のくだりでは「今すぐには無理ですがいつか必ず笑えるように頑張る」みたいな回答をさせて、最後の最後別れのシーンで自ら笑う、とか、阿須田家の人々の前では笑えなかったが、次の勤務先の自宅前で皆で撮った写真を見つめて一瞬笑ってから門を開けるとかが良かったかなぁと。

これちょっと語りすぎてやしないだろうか。私今最高に気持ち悪い感じになってる気がする。



・・・気を取り直して、あとは、笑顔ほどではなかったのだが、今まであれだけ「ミタさんも幸せになってYO!」と言い続け、一緒にいることにこだわり続けてきた子供達が、うららとの一件で別れを比較的素直に受け入れたというのもしっくり来なかった。

あれだけ色々あってミタに対する理解を徐々に深めてきたにもかかわらず、ミタの態度が豹変したことの裏を一切考えなかった子供達の態度が最初の頃と被り、危うくループものの可能性を考慮するところだったぐらいである。

最終回に色々なものを詰め込みたいのは分かるが、せっかく拡大してお送りしたのだから、もう少し子供達がミタとの別れを受け入れる描写を丁寧に描いた方が良かったのではないだろうか。



とまあ今回もグチグチと重箱の隅をつついてしまったが、視聴率にも現れているように基本的には面白い作品だったと思う。

最終回もミタが笑った瞬間のカタルシスと、松嶋菜々子は無表情だと綺麗だが笑うと可愛いということが分かっただけでも満足したし。満足するポイントがおかしい気もするけど。

とにかく、あの先が読めず続きが気になる感じは、ドラマを見ていて久しぶりに味わった感覚だったので、未見で興味が沸いた方は私のように試しに1話だけでも見てみてはいかがだろうか。