Lawless Area

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ぼくらの(ネタバレあり)


私はアニメから入ったくちなのだが、これを買い続けた人は中々に屈折しているように思える。

というのも、全11巻と非常にお手頃なこの作品。その求め易さとは裏腹に内容の方はかなりハードな感じに仕上がっているからだ。

主人公は夏休みに自然学校に参加した子ども達15人で、ひょんなことから洞窟内にいたジョンレノンっぽい怪しいオッサンにゲームに参加しないかと誘われるところから物語が始まる。

ゲームという表現によって大して疑いもせず、エントリーのようなことを済ませる子ども達だったが、実はゲームなどではなく「ゲームオーバー=地球の滅亡」というシャレにならない立場に追い込まれてしまう。

ちなみに、肝心のゲームの内容は至ってシンプルであり、巨大ロボットを操って出てくる敵のロボットを倒すというもので、ロボットのどこかにある核のようなものを引きずり出して潰せば勝利となっている。

ただ、このロボットを動かす燃料となるのがパイロットの命だというのだ。はい、一気に重い。

当然子ども達はみな絶望するのだが、負けたらどっちみち死ぬことになるのと、それぞれが抱えているもの、守りたいもののため、戦うことを決意するのである。


ここまでが1巻で明らかになるわけで、普通の感性の持ち主なら挫けてしまうと思う。

しかし、この作品はただ重いだけではなく、パイロットである子ども達に関する背景というか、ショートストーリーが中々に秀逸で、だからこそ私は買い続けたのだ。

身近に迫った死によって、自分自身や家族、周りの人間と真剣に向き合う様は、色々と考えさせられるものがあった。

また、そういった子ども達に関する丁寧な描写によって感情移入がし易くなり、それがこの作品の面白さにつながっているのだろう。卑猥な物を連想させる名字のくせにやるじゃん。

他にも、複雑な人間関係を上手く描いていたり、ミステリーの要素を盛り込んでいたり、色々なハプニングを起こすことで単調にならないようにしていたりと、作者の工夫が随所に見られ感心してしまった。

ただ、これだけ暗い作品を面白いと言えるぐらいに屈折した私が、手放しで褒めるなんてことはあり得ないわけで、もちろん物足りない部分もあった。

あの終わり方でもまあ良いっちゃー良いのだが、やはり「こうなってしまったのは自然現象」という乱暴な説明の仕方や、「どういった存在が始めた事なのか」、「最終的にはどうなるのか」等、読んでいて気になっていたところに関する描写が不十分だったのが少々残念ではある。

が、そこまでこだわらなければ全11巻で上手くまとまっており、私が今まで読んだ作品の中でも上位に位置するほどの満足感を与えてくれた。

バットエンドでも気にしない、鬱だろうがなんだろうがバッチコイ、明るいだけが漫画じゃないよね、なんて思える人には、是非読んで欲しい一品である。