東京マグニチュード8.0(ネタバレあり)
以前話題になっていたのを思い出して、軽い気持ちで見てしまったのだがこれほどとは思わなかった。
このアニメは深夜帯に放送されていたのだが、普通深夜と言うと萌えだのちょいエロだのを想像してしまいがちだと思う。
が、そういう考えのもとでこの作品を見ると痛い目を見るだろう。
まず何より重い。
主人公である小野沢未来はどこにでもいる女子中学生で、一見して特に大したハプニングも無く終わりまで行きそうな感じがする。
ところがそんな未来が弟の小野沢悠貴と夏休みにお台場で開催されているロボット展を見に行ったところで事態は大きく変わるのである。
まあ、タイトルにもなっているので誰しもが予想はしていたことだろうが、姉弟2人で出かけた先で大地震に見舞われてしまうのだ。
しかも弟がトイレに行っている間に地震が起きたことで、結果はぐれてしまい安否が分からない。
たまたまはぐれる前に2、3やり取りをしただけの赤の他人である日下部真理の善意ある協力によって、火事の中陳列棚の下敷きになっているところを間一髪発見し、救出する。
と、いうのが1話なのだ。重いったらありゃしない。
しかも災害をテーマに扱っているため、そのあとこの物語のゴールでもある自宅の世田谷に帰るまで、延々と暗い感じで物語が進行していく。萌えを期待した人は後悔しかしないだろう。
そんな感じで絶望感漂うこのアニメ。私は良いアニメだったと思う。
思春期特有の甘えや突っ張ったところのあった未来が、この大地震を通じて大きく成長する様は、見ていてとても好感が持てたし、そんな姉を終始気遣って明るく振舞う悠貴の健気さや、赤の他人であるはずの真理の優しさには泣けるものがあったし・・・
災害というものの恐ろしさや、人間の醜さ、優しさがとてもよく表されており、伊達に冒頭で
「本作品は首都圏での巨大地震発生を想定し、膨大なリサーチと検証に基づいて制作されたフィクションです。リアリティーを追求し、十分なシミュレーションを経てオリジナルストーリーを構築しておりますが、演出上、実際のものと描き方が異なる場合があります。」
という前置きをしてないなと感心したものである。
そしてリアリティーを追求した結果、地震=死ということさえもきっちり表現したため、悠貴の死をも描くに至ったのだろう。
確かにリアルだ。とてもリアルなのだが、悠貴がとても良い子に描かれていた分、喪失感がハンパじゃなかったのも事実だ。
思えば未来を東京タワーの倒壊から守り頭を打った後、ところどころで変調をきたしているような描写がなされており、何となく「死ぬんじゃないか」という思いはあった。
あったのだが、悲しいものは悲しい。
結果として未来が壊れてしまい、弟の死を最後の最後に受け入れたのだが、この回と6話辺りの古市さんの回は泣いたね。
特に未来と未来が作り出した幻想なのか霊なのかは分からないが、死んでからも一緒にいた悠貴との最後の別れのシーンなんて嗚咽ものだった。
このアニメを見る事で、誰しもが何かしらを考える事と思う。
「暗いのは嫌だ」、「萌えないならいいや」、「バトルとか無いの?つまんねぇ」等々、色々な理由で見るのを回避していた人にも是非見ていただきたい作品である。
リアリティーを追求した結果かなりのクオリティであることは間違いないのだから。
まあ、一応リアリティーを謳っておいて、悠貴の幽霊的な存在とか、未来はスカートなのに一回もパンチラがねぇじゃねぇかとか、そもそも他人であるはずの真理があんなに親切なのはおかしいとか、ツッコミどころも多々あるが・・・