Lawless Area

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コクリコ坂から(ネタバレあり)


上映されていた当時、一体何人の人が「え?ココリコ?あのお笑いの?」というしょーもないボケをかましたことだろう。あれ、もしかして私だけ・・・?

ま、まあとにかく、この作品は駿Jr.による作品という事で、ゲド戦記症候群により見るのを敬遠していた人も少なくなかったのではないか。

そういう心のトラウマを乗り越えたものだけが見ることを許されたこの作品、ちょっと前にテレビでやっていたのをようやく見終えたのでレビューを書いてみようと思う。



まず、こりゃ一体なんの話なのか、坂から何か転がってくるのかなんなのか。

タイトルだけでは全く想像できないと思うので、(必要ないとは思うが)ざっと説明しておく。

簡単に言うと耳をすませばの劣化ば時代は恐らく学生運動が盛んだった頃で、舞台は学校を中心とした港町。

学校にある歴史ある建物(カルチエ・ラタン)を、新しく部室棟を建てる為に取り壊そうとする学校側に対して、生徒が何とか阻止しようと運動を起こしている。

その中心人物となるのが風間俊、主人公である松崎海は、ふとしたことから彼らの手伝いをするようになり、2人は徐々にその距離を近付けていくが・・・。



とまあ、こんな具合である。

ちなみに、タイトルのコクリコ坂からっちゅーのは、海が住んでいるのが高台で、坂を下ってなんやかんやってなことからだろう。ちょっと雑だったか。

話を戻してこの作品は、「海と俊が最終的にどうなるのか」がメインの話となっていて、その裏で「カルチエ・ラタンを俊達は守れるのか?」という話が平行して進んでいく。

あくまで後者はおまけのようなものだろうが、2人の恋愛だけにスポットを当てるのではなく、こういった話も同時に進んでいくというのは見所が多くて良いと思う。

メインの話も、典型的というか、予想を裏切らない展開になっており、変に奇をてらわない点は好感が持てた。



ただ、もしかしたらテレビで放映された方は編集されたバージョンなのかもしれないし、私が単に見落としているだけなのかもしれないが、細かいところの作りが甘い。

まず一番気になったのが、海の心理描写である。

例えば、最初は全く興味が無かった筈が(というか、むしろ悪印象すら抱いていた)、何故会ってから間もないのに俊の手伝いを快諾したのか。

何をきっかけにして、海は俊に好意を抱くに至ったのか。その逆も言えるが、俊は海をいつ好きになったのか。

旗を上げ続ける海は、一体何を思っていたのか。祖母の「辛くないか」という問に対して、もっと深く掘り下げて欲しかった。

また、俊を手伝うようになってからの海が、どうにもただ流されているだけのように見えてしまったのも残念だった。



他にも、父は亡くなったようだが、母は一体何をやっていて、どれくらいの期間アメリカにいたのか。というか突然帰ってきたのもビックリしたし。

メルって呼ばれているのはどうしてなのか、一緒に住んでいる住人達は一体なんなのか。分からないことばかりである。

確かに映画という限られた中では、あれもこれもというのは難しいと思うが、それにしても少し作りが雑すぎやしないだろうか。



そんな粗さが目立ったこの作品、最大の見所は何と言っても俊役である岡田君の演技だろう。

ゲド戦記で彼が一体どんな演技をしていたのか、全く記憶に残っていなかったのだが、また使われるならそれなりだったのだろうと思っていたところ、予想外の出来でかなり驚かされた。

彼凄い、凄い下手くそだ!

これまで数々の芸能人が、ジブリ映画で遺憾なく棒演技を披露してきたが、その中でもぴか一の棒演技だった。

字幕を付けたら殆どが「コレガオトウサン?」みたいな表記になったことだろう。

それと比べて聞くと、長澤まさみは数々の作品に声を吹き込んでいるベテランさんのように思えた。某デュエリストに至っては天才かと思った。それほど岡田君は酷かったのだ。

あまり言い過ぎるのもそれはそれで・・・とは思っていたのだが、あえてまた言いたい。

別に芸能人を使うことに関しては反対ではない、メインキャストに声優を一切使わないというポリシーもまあ良い。

ただ、芸能人だけで固めるにしても、せめてそれなりに上手い人をオーディションで決めてはもらえないだろうか。

客寄せのためなのかなんなのかは分からないが、あまりにも下手な人を使うのは作品の質を下げるし、その人が可愛そうだ。何も悪くないのに叩く人もきっといるだろうし。



とはいえ長々と文句を垂れたが、前作のゲド戦記に比べれば、本当に、本当に良くなっており、宮崎駿もかつての勢いが無い今、そのうち父と並ぶかそれを超えるような作品を作ってくれるのではと期待させる作品ではあった。

期待させる作品ではあった。って何上から目線で語っちゃってんのこの人。え、何様なの?

急に我に返って今、もの凄く恥ずかしくなってきているが、それでもめげずに言おう、悪くなかったよ吾朗

彼の今後の作品に期待しつつ、そろそろ鬱陶しくなってきていると思うのでここいらで筆を置こうと思う。