Lawless Area

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ステキな金縛り(ネタバレあり)


同じく三谷幸喜の作品である前作の「ザ・マジックアワー」でそれはもう死ぬほど笑った記憶があるので、今作もきっと面白いだろうと無駄にハードルが上がった状態で観に行ってきた。

CMの感じで何となく話の内容はわかるとは思うが、一応あらすじを述べるとこんな感じだった。



宝生エミ(深津絵里)はどんなに難しい案件もサクッと弁護してしまうスーパー弁護士!ではなく、かなりのドジっ娘でミスばかりしてしまうダメダメ弁護士だった。
優秀な弁護士だった父とは異なり、失敗ばかりの彼女に事務所のボスである速水悠(阿部寛)が遂に最後通告をつきつける。
追い詰められたエミは無罪を主張する矢部五郎(KAN)を必死で弁護しようとするが、彼のアリバイを証明できる唯一の存在があろうことか落ち武者の幽霊である更科六兵衛(西田敏行)しかいない。
普通ならそこで諦めそうなものだが、エミはなんとその六兵衛を法廷に証人として出廷させようとする。
普通の人には見えない六兵衛は証人として通用するのか、裁判の行方はいかに・・・?!



無茶苦茶である。

というわけで、幽霊が証人とか非現実過ぎるだろ、と思ってしまうリアリストな方には向かない作品だと思う。法廷での様子なんかは実際とは大きく異なるし。

が、これをあくまでファンタジーとして軽い気持ちで見られるのであれば、中々に楽しめる作品なのではないだろうか。



まず、宣伝でいう「一番笑えて、泣ける」の“笑い”の部分に関してだが、前作と比べるとやや劣るものの、所々で思わず噴いてしまうようなシーンがあったのは確かである。

予想外からベタなものまで色々あったが、やはり幽霊ネタならではの「見えない人からするとただの変人」というくだりが面白く、わかっていても笑わずにはいられなかった。

六兵衛関係のシーンは西田敏行のアドリブも多々あったのだろう、共演者も素で笑っているんじゃないかと思うようなシーンがあり、その誘い笑いにまんまと釣られてしまった。

その他にも小佐野徹(中井貴一)が死んでしまった愛犬と再開するシーンで、傍から見ると仰向けになって奇怪な動きなので店員が唖然とするというくだりでは、会場が一際笑い声に包まれていたような気がする。



次に、“泣ける”の部分に関してだが、正直これに関しては微妙だった。

本来であれば感動というか悲しい気持ちになるはずの“死”の問題が、死んでしまった人とも容易に会えてしまうという設定により軽くなってしまっていたのだ。

特に速水が死んでしまったシーンは止めとなったと言っても過言ではなく、本来であれば「えっ!?あんなに元気だったのにそんな・・・」と悲しくなるはずが、「何で死んでるんだよ(笑)」くらいの感じになっていたし。

ただ、そういった“死”関係については泣けなかったが、最後のエミが父親である輝夫(草磲剛)と再会(?)するシーンは泣きはしないまでもタイトル通りとてもステキだったと思う。

幽霊が見える条件が、1.ついてない、2.最近死を身近に感じた、3.シナモンが好きというなんとも独特なものだったのだが、エリが裁判を終えて父と再開できた!かと思いきや幽霊が見えなくなっていたのだ。

これは恐らく「1.の条件を満たさなくなった→エリが今回の裁判で成長し、自信をもてるようになったことで運気が回復した」ということなのだろうと解釈したのだが、そうだとするとなんともステキではないか。

しかも、普通なら気付かない所を、法廷に残されていたハーモニカによって奇跡的に交流できたという演出も、個人的には良かったなーと。



ということで、流石に宣伝の「三谷映画史上、“一番笑えて、泣ける”最高傑作、ここに誕生!!構想10年、三谷監督が長年温め続け一番実現させたかった企画が、ついに映画化。」というのは少々大げさだとは思うが、ハードルが上がっていた割にはその期待を裏切らない作品だったように思える。

笑いのパートはもちろんのこと、何気ない設定が後々活きてくるということが多々あり、作品の雰囲気とは異なる緻密さがそこには見て取れた。

また、所々に三谷幸喜の遊び心が現れており、中でも前作の主人公である村田(佐藤浩市)が登場するシーンでは思わずニヤリとしてしまった。

もちろんツッコミ所も結構あり、「???」と首を傾げてしまうところもあったのだが、それを差し引いても良い作品だったと思う。

観終わったあと思わず笑顔になってしまうような、そんなステキな作品だったので、未見の人で興味が沸いた方は是非観に行ってみてはいかがだろうか。